数か月前に2名入社したのですがその一人が退職する事になりました。
わずか4か月と何とも言えない短さです。会社としても人員不足で求人したのに非常にもったいないです。
採用時に特にSPI能力検査とかを行う訳でもなく面接のみでの採用です。弊社は中小企業ですのでSPI検査して選抜したのならば採用される人は誰もいません。意味が無いだけです。
SPIでどのように判断するのかは知りませんが、仮にどんなに検査の結果が悪くても採用するしかありません。
弊社で重要視するのは面接での人柄です。何を質問しているのかは私は知りませんが、通勤時間や通勤手段を確認するための住まいと、前職と辞めた理由、家族構成を聞いて何よりも弊社で長く働けるかを判断しているのでしょう。
しかし、せっかく採用した社員が辞めてしまっては採用や教育にかかったコストは回収できません。
何度も同じ事を繰り返すと会社の評判もめぐりめぐって悪くなるとも思われます。
採用した社員が辞めてしまった理由は「採用した社員の問題」と片付けずに会社や教育した社員、新入社員とのかかわり方を踏まえ考えてみました。「良い社員が入らない」のではなく「良い社員にしない」のが原因とも考えられます。
今回は大変残念な結果になってしまいました。今回の退職を「辞めてしまった社員」の責任にして考えないのではコストを掛けて何も学ばないのと同じです。せめて自分の勤めている会社の事を振り返り「彼の退職」を無駄にしてはならないと思い記事にしました。
彼には大変申し訳ない事をしました。せめてどこかの誰か1人でも参考にしていただければと思っております。
会社の特徴
弊社はパートを含め約50名規模の食品メーカーです。大規模の企業とは違い万年人手不足です。正社員は15名程で小規模です。幸いにも取引先様には恵まれており皆さんもご存じの大手の飲食店などへ納入させて頂いております。
仕事が決まると途端に忙しくなるのは小さい会社のあるあるです。規模が大きければ多少パートさんを休ませても目立たないだけなのかも知れません。
今回は年末の忙しさが一段落する見込みの時点での採用となりました。忙しい時は少しでも戦力にしたいという思いもあります。また暇になると「やる事がない」となってしまうからです。
正確には「やる事がない」のではなく次の繁忙期に向けての取り組み、準備と社員を育てて戦力化する時期でもあります。そして今回入社の2名の社員もそれに合わせて採用した訳だったのですが。
「入社後のイメージづくり」イメージが違ったとならないように
入社後のイメージが違っていたのは、よくある事です。さらに付け加えると間違えなくある事です。それはその人が生きてきた環境が全く違うので当然の反応です。
違った環境に適応するためにはそれなりの時間と手間を掛ける必要があります。新入社員がイメージしていた弊社のイメージはネットで検索や面接担当者が会社の説明、工場内の見学でしかの情報しかありません。しかもその情報はその人の目(色眼鏡と言う表現が正しい)で見ています。
普段私たちが見ている工場も恐らく違って見えるはずです。それは自分を守る反応でもあります。
縁があって入社したのです。知らない環境に身を置く事はかなりのストレスが掛かります。人によっては逃げたくなるかも知れません。
まずは環境に慣らせる事が大切です。人で不足の時には作業を教える事も大切です。しかし私が思う一番大切な事は「居場所を作る事」です。これは生きて行く上での「安全地帯を確保する」事です。コンフォートゾーンと言ったりします。
人は「コンフォートゾーン」を外れると力が発揮されないと聞いた事があります。ですのでまずは「安全地帯を確保する」事に注力して作業を教えます。人当たりの良いパートさんと一緒に作業させたりします。とにかく孤立させないように細心の注意をします。
人生経験の長いパートさんは流石です。適度な世間話を踏まえながら「可愛がってくれます」ので協力いただきながら作業を教え「居場所」を作ります。
「入社後のイメージづくり」ができれば自身が考えていた「イメージ」が更新され「イメージが違った」とはならないはずです。
教育体制がない
規模が小さい会社では教育のノウハウは恐らくないでしょう。自分が教わったように教える事となるのが多いです。
私も入社当時や配置転換時は教わりました。しかし、今思えば教え方は雑だったと思っております。
優秀な人間ではないので、一度教えただけで覚えられるような事はありませんでした。自分で嫌になってしまう事も多々ありました。決してメモを取らなかった訳ではありませんが、初めて教わる作業ではなかなか「教えたからできる」とはならないものです。
何度も何度も繰り返して覚えて行くものです。工場での作業は文字にできない事も多いので身体が覚えるまで行うしかありません。
「文字にできない」のには教える方が「言葉に変換できない」場合と教わる側が「聞いても理解できない」という場合があります。普段感覚で作業しているので「こうやって行う」位しか指導できない場合があります。
この作業を行う理由は・・・と細かく教えた方が当然ですが教わる側の理解も早いです。
教わる方が「何を悩んでいるのか」「何で動けないのか」を確認しながら「地道」に「少しずつ」「何度も」繰り返すのが新入社員との良い関係を築く事になります。
「聞いても教えてくれない」や「聞きずらい」と思われると作業の習得に余計に時間がかかる事になります。
そしてそれは作業の間違えや事故につながりますので注意が必要です。
間違っても「何度言ったら分かるんだ!!」などと腹を立てるのはどうかと思います。
何度言っても分からないのは「教わる側が受け取れる言葉」で指導していないのかも知れません。相手が受け取りやすい言葉や表現を選ぶのも指導する側の役目です。
何度も何度も同じ言葉を繰り返して、しまいには「語気を荒げる」方がいます。傍から見ると語彙が少ないと起こりがちです。教育する事は自分の成長になりますので非常に残念です。
やりがいがない
「仕事のやりがいがない?」人手が欲しくて雇ったのに仕事がないのか?何とも複雑な感じがします。
これは教育が進まないと新人が感じてしまいます。今回退職してしまった新入社員は「自分の居場所を作れなかった」のが原因の様でした。(私にはこっそり教えてくれました)
人手が必要で採用したのならどんどん作業を教える事です。それは新しい場所に慣れるためです。
「仕事は自分から進んで教えてもらうようにするべき」と言う考えもあるかと思います。しかしまだ何も分からない状況ならまずは目の前の仕事をしっかり指導して「居場所を作る」「居場所を作ってあげる」事が重要です。
「あなたがいてくれて助かります」の状態にする事が新入社員のやる気につながります。
いつまでたっても「何をやっていいのか分からない」のは指導が足りていない証拠です。
指導をしていない人に限って「あの人やる気ない」と決めつけてしまったりします。
あなたが「忙しくて人が欲しいと言うので人を付けたのに何で?」と思ってしまいます。
「しっかり指導した結果で新人が育たないのか」は振り返ってみるべきです。
労働条件が悪い
労働条件に付いては最近はかなり改善したのでは・・・は弊社だけでしょうか?長時間勤務やサービス残業もありません。食品工場なのに24時間365日営業ではないので条件は決して悪くありません。
パートさんも休みやすいし有休消化もほぼ100%の優良企業じゃないですか。
生産予定により多少の勤務時間の増減は仕事柄仕方がありません。
作業の問題でなければ「人」の問題です。離職の一番の理由は「人間関係」と言われています。今回仕事を辞めるに至った理由として、会社内での人間関係の問題が全く問題なかったとは言えないと思います。
仕事はともかく、人間関係が良好ならばわずか数ヶ月で退職するとは思えません。個人的な感想です。
会社のリスク
社員が辞めてしまうと会社としても損失です。求人募集をして面接して社内での入社手続きをしてと見えないところでコストがかかっています。
面接をして採用するだけではありません。その事について記して参ります。
採用コスト
人を採用するという事はコストがかかります。求人誌や新聞の折り込み広告、ネット掲載等の費用もかかります。その他に忘れてはならないのは、求人を掲載する上での検討時間や求人広告会社との打ち合わせにも時間が取られます。
会社の生産活動以外の雑務ですので何かと煩わしいです。求人に応募してもなかなか応募がなかったり、応募が来ても望むような前職や年齢ではなかったりと悩みは多いものです。
せっかく職歴が適しているのに、住まいが遠く通勤時間が長かったりするとなかなか選考しにくくなります。
教育コスト
入社してからもコストがかかります。社員なら作業をするだけではなくラインを管理し利益を出す事が仕事になります。パートさんの作業なら比較的早い段階で習得できるかも知れませんが、社員は更にその上に行けなければコストを吸収できません。
決してパートさんの仕事が簡単とは言いません。私はあの生産ラインに入っても役に立てませんので。
毎日パートさんには感謝しても感謝したりません。毎日ありがとございます。
なるべく早い段階で、それなりに育て上げなければなりません。ラインの管理を行うのは簡単そうに見えますがなかなか奥が深いものです。
先ず大前提としてラインにある機械の操作に慣れなければなりません。何かしらの不具合があった時にも調整や対応しなければなりません。
機械の他にも原料の管理も重要です。ラインで使用する原料を切らしてしまっては作業が止まってしまいます。
原料を出し過ぎればロスになり損失が生まれます。また作業の遅れも人件費が膨れてしまう事になり、ラインが速すぎれば不具合が発生するリスクも多くなります。
このいい具合を追及するのが社員の仕事と私は考えております。
不具合品が出るようなら上司に何を言われても(速度を上げろと)ライン速度を死守します。
ライン速度を上げても不具合品の手直しで、「速度を落とした時以上に時間がかかってしまう」事を分かっているからです。
会社の評価が低下する
社員の入れ替わりの多い会社は考えている以上に知られているものです。分かりにくい表現ですね。
入れ替わりの多い会社は常に求人を出している事が多いです。
求職している人は長期的に仕事を探していることもあるので「この会社いつも求人を出している」と分かるものです。当たり前と言えば当たり前です。
当然ながら「この会社何かあるのでは?」と勘ぐってしまうのは当然の事です。
例外もありますが求人は出せば出すほど人が集まりにくくなる傾向があります。繰り返しますが例外はあります。
定着率を上げるには
入社した社員には長く働いてもらいたいです。入社したのに数年で退職してしまうのは何とも残念です。
退職するのなら早く辞めてくれれば・・・と言う声も耳にしますが私は決してそんな事は思いません。
たとえ数週間でも縁があって入社してきたのですから、私ができる最大限で教育・指導いたします。
私としてはせっかく入社したのだから何かしら持ち帰ってもらいたいという思いからです。
学んだ事はどこかで役に立つかも知れません。長い人生役に立つ事が多いです。
労働条件を見直す
一社員では変える事は出来ませんがその中でもできる事はあると思います。勤務時間や休日の変更は仕事の状況に寄りますので何とも言えません。仕事が忙しい時に「時間なのでお先に失礼します」とは言いにくいものです。
色々な考えがあるとは思いますが、新入社員の時は時間は気にせずに「がむしゃらに取り組む」のが良いのではないでしょうか?
仕事を覚えるのに時間は必要です。勤務時間内で教えるのには限界があります。
身体を壊すほど長時間労働の悪条件ならば見直しも必要ですが少しは分かってください。
身体を壊すほど仕事があるのはある意味幸せなのかも知れません。程度の問題もあります。
仕事がないのは忙しい以上に苦痛かとも思ってしまいます。たとえ閑散期でも暇を持て余すというのならば、社会人としてはどうかと思います。
次の繁忙期に備えて取り組むのが社会人です。
入社後のフォロー
入社後のフォローが必要なのは分かっていますが、フォローの仕方が分からないのが現実です。
それは新人教育の仕方を教えてもらう事がなく、担当者が思い思いに教育するからです。
だいたいは「自分が教わったように教える」事になると思います。
教え方が悪いといつまでたっても育ちませんし、しまいには「こいつは覚えが悪い」とか言い出したりする始末です。
人それぞれ育った環境も違いますし能力も違います。それと中小企業の弊社には優秀な方は入社してきません。
普通に優秀な方はおりますのでその辺は理解してください。
人を育てるにはものすごく時間が掛かります。何度も何度も指導して分からなければ言葉を変えて伝え、それでも伝わらなければ更に他の言葉に変えて伝えます。こればかりは何ともトライするしかありません。
自分が分かっていても相手が分かっているとは限りません。特に私のような無能な人間は人一倍繰り返すしかありません。この事を理解していない指導者は教えるのが苦痛になります。
教える事、指導する事は自分の成長になります。自分が普段行っている事を言葉や文字として明確に表す事ができます。
入社後のギャップを埋める
入社後のギャップを埋めるのが社員教育です。ネットの会社情報や面接時の説明だけではイメージはつかめないものです。これも前項で記したように自分が分かっている事と相手が分かっている事が同じではないという事です。
このギャップを少しずつ埋めていく、ズラして行くのが教育するという事です。「少しずつ」がポイントです。
大きくズラすと苦痛になります。指導する側が「焦らずに少しずつ」ができないと新入社員を追い込んでしまい結果辞めてしまう事になります。
新入社員が辞めてしまわないように まとめ
社員が辞めてしまうのには必ず原因があります。この原因をやめた社員の原因にせず、会社としても「何かしら原因があるのではないか」と見直す事が大切です。
辞めた社員の責任にしている場合ではないのです。
社員が辞めると直ぐに辞めて行った社員の責任にしているのを見てきました。
何度も何度もです。「同じ事を繰り返しているのに気付きもしないのか?」と同じ社員でありながら残念でなりません。
教育している担当者が指導力がないとたいていの場合は「さようなら」になります。
「何人辞めても大丈夫!!」の時代ではなくなっています。
指導する方法が分からないのなら、ネットで調べれば様々な方法がありますし書籍でも見つける事ができます。
それらの指導方法が正しいとは思いませんが指導する側も「試してみてどうなのか?」を検証する必要はあります。
ダメなら他の方法を試せばいいだけの事です。
頭で考えていても良い方法は思いつく事はありません。「私は凡人」ですので考えても無駄です。
なら色々探して試してみるしかありません。
うまく行く事をもあればうまく行かない事も事もあります。だから人を育てるのは面白いです。
指導すれば指導する程、教え方は上手になります。それは作業の習熟度が上がるからです。
普段言葉にしない事をアウトプットする事で指導する方の理解も深まるからです。
「こんな感じでやる」と言う漠然とした言葉から「コレコレの理由からこの作業を行う」更に「この部分に注意を行わないとこのような結果になる」と細かく言葉にする必要があります。
具体的な作業を記せないので申し訳ございませんが「やっている事の意味」は自分一人で作業している時の「数倍から数十倍」意識して言葉にしなければなりません。
「一を聞いて十を知る」と言う言葉がありますが、全く作業を知らない状態ならそれはほぼ無理です。
「十の教える事があるのなら二十は教える」必要があると私は感じております。
ただ私の新入社員への思いを記した内容になってしまいましたが参考にしていただければ幸いです。
自転車ブログなのに自転車とは全く関係ない内容ですが、機械調整を指導する時に「自転車整備」の話を混ぜたりしています。
自転車は誰もが身近に使用していて、調整が比較的簡単で効果も直ぐに実感できる良い教材だからです。
またの機会に記すかも知れません。
では、皆様楽しい仕事ライフを送ってください。
ありがとうございました。
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